劇団わるだくみ第3回本公演

「風が吹くとき」
原作 レイモンド・ブリッグズ

演出 高橋直也

 

2004年6月5日(土)

長岡リリックホール第1スタジオ
①13:00~ ②18:00~ (総観客数180名)

 

ストーリー

ねんころ 赤ちゃん木の上で  
風が吹いたら ゆりかご揺れる
木の枝おれたら ゆりかご落ちる
落ちるよ 赤ちゃんもなにもかも

 【Mother Gooseの詩より】

 

英国の片田舎に住む老夫婦、ジムとヒルダ。ジムは定年を迎え、これからのんびりとした生活が始まろうとしていた。ところが、何気につけたラジオは戦争勃発を知らせる。

 「核爆弾が落ちる・・・」

政府は三日以内に核シェルターを作れと言う。
政府発行の’公式’リストを頼りに準備をするジム。
先の大戦同様、今回も有能で勇敢な指導者が事態を切り抜けてくれると言うヒルダ。
そこへラジオ。「敵のミサイルがわが国へ向けて発射されました。」洗い物に行こうとするヒルダを抱えて、ジムはシェルターへ飛び込んだ・・・。

 

CAST
ジム役  根津友和
ヒルダ役 斉藤桂子

以下共通
ロシア兵役他 yaji
出演 ダンス(ダンスチームD.I.PARTY )
     ソプラノ(長岡市民合唱団 反町加代子)

 

スタッフ
演   出 高橋直也
舞台監督 佐藤正徒
舞台補佐 中澤大介

(演劇制作集団あんかー・わーくす)
制   作 山田亜矢子
制作補佐 上杉一隆

(演劇制作集団あんかー・わーくす)
音   響 佐藤美樹
照   明 陶山悠子
映   像 delmonte

撮   影 下江龍太(長岡造形大学映画部)
宣伝美術 峰村恵利子
協   力 演劇製作集団あんかー・わーくす

 

 

演出所感: 
2人だけの芝居を作ってみよう。
いつもより人数も少ないし、今までほど大変じゃないだろう。。など、たかをくくって臨んだ公演だったが、やはり人に見せるものとなれば、いろいろ気付いた事はやらねばいけない。と、試行錯誤してできた舞台がこれ(写真参照)。

2人の生活をいろんな角度から見てもらいたい。役者もあらゆる角度に神経を行き渡らせて演じてもらいたい。そんな欲張りな設定だったので、かなり大変な公演となってしまった。

演出にD・Iパーティーというダンスチームに核爆発をイメージしたダンスを披露。ラストのシーンでは、長岡市民合唱団のソプラノ歌手にオリジナルの歌を歌ってもらった。

 泣いている人あり。寝ている人ありで、公演後賛否両論の意見が巻き起こった。
公演後、一通のメールもらう。「感動して、そして原作を読みたくなり、すぐに図書館に行って借りてきました。良い本に出合わせてくれてありがとうございます」と、お礼のメールが来た。
若い人に戦争について考えて欲しい。これを狙っていたので、嬉しかった。

 

当日パンフレット

演出あいさつ
演出 高橋直也

過去2回の公演とも喜劇を演じてきた「劇団わるだくみ」。今回は「核」をテーマに夫婦愛を描く、暖かくも悲しい物語。
原作は「スノーマン」で有名なイギリスの絵本作家レイモンド・ブリッグズ。彼の描く愛嬌あるキャラクターから映し出される日常は、滑稽であり、現実でもある。

平和とは何か・・・ある老夫婦の日常に、色も臭いも無い「殺人兵器」が、とにかく淡々とした平和な生活に突然入りこんでくるという恐怖をじわじわと描いた作品です。優しくのん気なヒルダの言葉や、愛情あふれるジムの行動が穏やかなだけに尚更見終わった後いつまでも心に残り、今ある私たちの平和な生活がいかにあたりまえじゃない。という事を実感させてくれます

ジム役を演じる根津友和は、新入団員とはいえ昨年まで都内声優学校に通っていた実力派。ヒルダ役斉藤桂子は、旗揚げ時からの団員。桂子という名前をを稽古に変えてもいいくらい練習熱心な努力派です。そんな2人が真っ直ぐに演じます。


 『今回のわるだくみ』

演出概要
この芝居は2人芝居。生活スペースもダイニングキッチンのみと限られています。
なので比較的容易に絵本から舞台へ台本を起こすことができました。
今回の舞台は3方向から観れる変形舞台となっています。どーしてか?横からなんて観づらいじゃないか!!と散々周りから言われましたが、コレだけは突き通しました。
それは舞台の役者さんを間近で観てもらいたいことと、私が「リリック第1スタジオでも、変形舞台でできる」という実績が欲しかったという、変な意地を張ったためです。
役者に動きをつけるときも、前だけではなく、横にも意識を置いた稽古を心がけました。それでもさすがに横側のお客様は観づらく、役者さんがあまり向いてくれないので寂しい思いをするかもしれません。前もって謝っておきます。でも普段の舞台では観れない角度から観る芝居も変わっていていいのかな?とも思います。

私の演出はまだ3回目。技法として凝った事ができないので、至ってシンプルに努めました。その代わり、他団体とのコラボレーションによる幅広い世界観を作りました。
原爆の爆発を表現しようと、ダンスチーム「D.I.PARTY」をお呼びしました。
リーダーと親交があったため、快く出演を引き受けてくださいました。ほんの3分程の曲ですが、ストーリーに沿った表現となっています。見る価値アリです。

次に芝居の演出上どうしても欲しかった「ナマの歌声」でもツテがない・・・。 いろいろ聞きまわったところ、リリックホール職員の方から長岡市民合唱団の方2名を紹介いただきました。早速事の次第を説明したところ、これまた快くOKしてくださいました。
こんな小さくて怪しい劇団を理解し、何度も衣装合わせや、通し稽古にお付き合いいただき本当に感謝しています。

今回コラボレーションをした事については、いろいろなメリットがあります。
まず、芝居を観たことの無い人も、観にくるかもしれない。逆に芝居以外に興味を持ってくれる人もいるかも知れない。
長岡で活躍している、様々なジャンルの方を知ることができる。 など、頭打ちと言われる長岡の演劇人口が増えるキッカケとなる可能性が高くなる訳です。
始めから興味を持って一人で会場へ行く人は少ないと思います。「友達が出ているから」「友達に誘われたから」など、ちょっとしたキッカケで一度でも会場へ行ってしまえば、次に足を向けるのは、そう重くないはずです。
この芝居はもしかしたらつまらないかもしれません。でも、もしかしたら、会場へ来た皆様へ「何かしよう」という気持ちを与えることができるかも知れません。
そんな方が一人でもいる限り、私たちのわるだくみは続きます。
演出は私じゃないかもしれないけど・・・・(泣)

 

ゲストコメント
「現代演劇におけるわるだくみ」

劇団山の手事情社 主宰 安田雅弘

日本の現代演劇について考えるとするじゃない。
単純にお客さんの立場からするなら、演劇から娯楽以外に何を受け取ればいいのかはっきりしない。
よくわからなかったり、むずかしそうだったりする。本当にそうなのか。ただ作り手がバカだったり、未熟だったりするからそうなってしまうのか、そのあたりも怪しかったりする。
知り合いが出ていると聞いたから見に来たものの、「どうしろってんだよ」と感じて、自然と足は遠のく。二回くらいは来るけれども、あとはいろいろ言い訳を見つけて行かない。「ごめん、忙しいんだ。次呼んでよ、必ず行くから」。そして二度と行かない。
娯楽だというのなら、テレビや映画に比べると不便だ。第一高い。それにおおむねヘタクソだ。ヤバイと思っても一度劇場に入ったら最後、よほど勇気を出さないと途中退場できない。元が取れないのも腹立たしい。レンタルビデオの店に行っても演劇のビデオなんてまずないし、あってもつまらない。そもそも舞台よりビデオで見たほうが面白い演劇って存在そのものが矛盾してるだろ。
いきおい、現代の日本社会における演劇は「商業」と銘打ってナマの有名人に会えるということでもないと、存在自体がどんどんジリ貧に陥ってしまう。
デフレスパイラルに自動的に組み込まれることになる。
結果「劇団員」という言葉は「貧乏を自慢してもいい人」「周囲の迷惑を楽しむマゾヒスト」として認知されるに至った。
しゃくだよなぁ。演劇にかかわるって、そんなに情けないことなのか、本当に。
では、娯楽ではなくて、一体何なのか。何を受け取ればいいのか。そこなんだよね。
個人的には、作り手観客、双方の歩み寄りが必要だと思うのだけれど。
早くも指定の字数をオーバーしているので、結論だけ書くね。いつかちゃんとまとめるから、っていつ?
観客教育は必要でしょう。ま、私が長岡でやらせていただいたことはそれだったと自覚しております。今どうなってるの?
大丈夫か、長岡。全国的な注目にはまだ遠く及ばないってことははっきり言っておくぞ! 私が通っよりも作り手の問題が大きいでしょ。勉強してる? 劇団はお笑い道場じゃないんだよ。何をしたいのか。テレビでも映画でもラジオでも雑誌でもマンガでも文学でもない何か。演劇でしか表現できない何か。見えてるか「わるだくみ」諸君。ま、道は長いよ、お互いに。業界は狭い、がんばってれば、いつか一緒に仕事できると思う。
健闘を祈ります。東京の兄より…っていつ兄弟になった。

 

○安田雅弘さんプロフィール
劇団「山の手事情社」
 主宰・演出家 安田雅弘

1984年 劇団「山の手事情社」を結成。
1999年および2000年 長岡市芸術文化振興財団の委嘱により
 リリック野外劇『夏の夜の夢』、『じゃじゃ馬ならし』
 (原作=W.シェイクスピア)を演出。
 野外劇メンバーの多いわるだくみにとってアニキ的存在。

 山の手事情社HP
 http://www.yamanote-j.org/

 

 

出演者紹介

根津友和
2001年井上和彦の声優学校を経て、2003年シアターゴーイング江口WSに参加
わるだくみ団長にスカウトされ今に至る。将来の夢は”仙人になる”

 

斉藤桂子
99,2000年のリリック野外劇に参加。以後シアターゴーイング実行委員など
演劇に関わり、わるだくみ旗揚げ時より参加。初演は”男役”2回目では”男
 役を女役で”演じ、やっと今回”女役”を掴む。(フケ役だけど)

 

D.I.PARTY
代表者:阿部牧子。結成して、1年7ヶ月。女の子だけのダンスチームで、
週1回、リリック3スタで練習。ダンス(それ以外でもいろいろ)を通して、友情深めている。

 

反町加代子(ソプラノ)
長岡市民合唱団員。他にチャペルの聖楽隊や、他団体とユニットを組み活動。
市民オペラ「魔笛」など、多方面で活躍。

 

佐藤文子(アルト)
92年長岡市民合唱団入団。五十嵐郊味さんにボイストレーニングを受ける。
市民オペラ「ラ・ボーム」「ミルナの座敷」「手かがみ」などに合唱として出演
するなど、多方面で活躍。

舞台写真

当日配布パンフレット